最終更新日 2023年11月24日
Q. 1 内分泌かく乱化学物質(以下「環境ホルモン」という)とはなんですか?
Q. 2 環境ホルモン作用が疑われている化学物質にはどのようなものがありますか?
Q. 3 ダイオキシンも環境ホルモンなのでしょうか?
Q. 4 環境ホルモンは、野生生物やヒトに対してどの様な影響を及ぼすのでしょうか?
Q. 5 環境ホルモンの摂取量を減らすにはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか?
環境ホルモンの排出を減らすためにできることはなんですか?
Q. 6 プラスチック製容器の一部に環境ホルモンが含まれていると聞きましたが大丈夫ですか?
Q. 7 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)とはなんですか?
Q. 8 化学物質について、国や県、市はどのような対策を講じているのですか?
Q. 9 化学物質過敏症とは何ですか?
Q. 10 化学物質過敏症の主な症状は何ですか?
Q. 11 化学物質過敏症の原因は何ですか?
Q. 12 化学物質過敏症を予防や治療する方法はありますか?
Q. 13 化学物質過敏症の症状を持つ方にできる配慮はありますか?
Q. 14 化学物質過敏症に関する問い合わせ先はありますか?
世界保健機構・国際化学物質安全計画では、内分泌かく乱化学物質を「内分泌系の機能に変化を与え、それによって個体やその子孫あるいは集団に有害な影響を引き起こす外因性の化学物質」と定義しています。
まず、内分泌について簡単に説明します。体内の細胞群の中には、タンパク質、ポリペプチド、アミン、脂質等を産生し、これを分泌顆粒(注1)という状態で細胞質の中に持っている細胞が多数存在します。
細胞がその分泌顆粒内の生産物を細胞外へ排出することを分泌といい、分泌経路により、外分泌と内分泌があります。内分泌とは、細胞からの分泌物が毛細血管から循環血液中に入り、標的臓器に運ばれ、標的器官の機能を刺激してスイッチオンの状態にすることです。
このように外界のどことも通じていない循環血液中という体内に分泌されるので「内分泌=エンドクリン」と呼ばれます。そして、内分泌腺から血中に分泌されて他の臓器・組織・細胞に作用する物質をホルモンと言います。
さて、ホルモン様作用を有する化学物質が存在することは古くから知られていましたが、生体内の内分泌系の単なる変動(modulation)とかく乱(disruption)を明確に区別することは現在では必ずしも容易ではないとの認識にたって、ホルモン作用を有する化学物質のうち、生体内の障害あるいは有害影響を起こすものを「内分泌かく乱化学物質」ととらえようとしているわけです。
(注1)分泌顆粒: 分泌を行う細胞中に存在する膜に包まれた顆粒で、内部に濃縮された分泌物を含み分泌刺激に応じて膜を開口し、顆粒外に放出する。
-出所:厚生労働省「内分泌かく乱化学物質ホームページ」より-
環境ホルモン戦略計画'98」において、「内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質」として、ダイオキシン類やPCBなど65物質のリストが公表されました。
(詳細はこちらをご覧ください) (PDF 54KB)
これらの物質は平成12年度より優先して調査研究が行われており、H15年6月に20物質について、文献調査及び試験を行ってきた結果が取りまとめられました。
(概要はこちらをご覧ください) (PDF 12KB)
なお、「環境ホルモン戦略計画'98」はH15年度より2年計画で改訂作業を予定しており、それに伴って環境ホルモン作用が疑われている化学物質にも変更があることが予想されます。
環境省「環境ホルモン戦略計画'98」「平成15年度第1回内分泌かく乱化学物質問題検討会報道発表料より-
ダイオキシン類は意図して製造・使用される化学物質ではなく、他の化学物質の製造や燃焼などに伴って生成されます。
ごみ焼却炉の焼却灰の中からダイオキシン類が検出され、社会問題になっているほか、製紙・パルプ工場で紙を漂白するときに塩素を用いると、紙の原料中の有機物と反応してダイオキシン類が発生するといわれています。
ダイオキシンも内分泌かく乱作用が疑われている物質の1つです。ダイオキシンはダイオキシン受容体(注1)という特別な受容体を介して影響し、エス トロゲン(注2)様作用を有する物質は主にエストロゲン受容体を介して影響します。ダイオキシンの影響には、その直接的影響、例えば、動物実験で観察された強力な毒性、発がん性、催奇形性のほかに、エストロゲン受容体の作用に影響を与える間接的な影響もあります。
従って、これまでごみ焼却場や製紙・パルプ工場に対して、ダイオキシン発生防止のための指導が行われているほか、平成10年5月に、現時点での外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)問題についての基本的な考え方や、今後進めていくべき具体的な対応方針をまとめた「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」を発表し、ダイオキシン対策の方針が示されています。
ダイオキシン類による環境汚染は世界的な問題であり、ダイオキシン類の危険性や対策の方法について科学的な議論が国際的に続けられています。
(注1)受容体: 化学的伝達物質やホルモン等と結合してその情報を細胞内部に伝えるタンパク質。
(注2)エストロゲン: 卵巣の卵胞で作られるホルモンの一種で、思春期発来、二次成長発達、生殖機能や骨代謝維持に不可欠な物質。
-出所:環境省「化学物質対策の動向」・厚生労働省「内分泌かく乱化学物質Q&A」より-
現在までのところ、野生生物への影響については、様々な現象が報告されていますが、環境ホルモンとの因果関係は未だよくわかっておらず、引き続き調査が行われています(表1)
またヒトへの影響については、内分泌系への薬理作用を期待して医薬品として使用されたDES(注1)のような例を除き、内分泌かく乱化学物質と疑われる物質により有害な影響を受けたと確認された事例は今のところにありません。
成人の内分泌系は、恒常性(注2)維持機能が完成しており、化学物質による内分泌かく乱作用に対して、抵抗性があります。しかし、内分泌系の未発達な胎児や未熟な幼児、小児ではこの抵抗性が弱い可能性があります。これは、胎児においては、諸器官の形成に異常や遅滞を来すことにより不可逆的な影響が一生残ってしまう可能性にも繋がります。このような観点から特に子供に影響があるのではないかと危惧されていますが、明白な影響は現在のところ分かっていません。食生活の変動や生活環境の変化等による影響と重なり合って、疫学調査による確認も取れていません。
実験動物を用いた研究等により、胎児や未熟な幼児、小児で起こり得る影響の作用機序の解明を急いでおり、その結果を安全性評価の検討に役立てようとしているところです。
(注1)DES:ジエチルスチルベストロールというホルモン剤。医薬品として、1970年代に流産の防止として使用され、服用した妊婦から生まれた子供に子宮癌が多く見られる等の健康被害が認められた。このため現在は使用されていない。
(注2)恒常性(=ホメオスタシス): 生物体の体内諸器官が、外部環境(気温・湿度等)の変化や主体的条件の変化(姿勢・運動等)に応じて、統一的・合目的的に、体内環境(体温・血流量・血液成分等)を、ある一定範囲に保っている状態、および機能をいう。哺乳類では、自律神経と内分泌腺が主体となって行われる。
-出所:厚生労働省「内分泌かく乱化学物質Q&A」より-
(表1)野生生物への影響
生物 | 影響 | 推定される原因物質 | |
---|---|---|---|
貝類 | イボニシ | 雌性化、個体数の減少 | 有機スズ化合物 |
魚類 | ニジマス サケ |
雌性化、個体数の減少 甲状腺過形成、個体数の減少 |
ノニルフェノール、人畜由来女性ホルモン(断定されず) 不明 |
鳥類 | カモメ メリケンアジサシ |
雌性化、甲状腺の腫瘍 卵の孵化率の低下 |
ともにDDT、PCB(断定されず) |
哺乳類 | アザラシ シロイルカ ピューマ ヒツジ |
個体数の減少、免疫機能の低下 個体数の減少、免疫機能の低下 精巣停留、精子数減少 死産の多発、奇形の発生 |
PCB PCB 不明 植物エストロジェン(クローバー由来) |
-出所:環境省「環境ホルモン戦略計画'98」より抜粋-
内分泌かく乱化学物質の種類や、その健康への影響については不明な点も多く、また、今日まで、食品からの化学物質による内分泌かく乱作用により有害な影響を受けたと確認された事例は今までのところありません。このため、摂取量を減らす為の方策について一概に述べることはできません。
しかし一般的に、少数の食品を反復して(例えば毎日)食べることは、その食品に問題があった場合に、危険性が増えることとなりますので、できるだけ多くの種類の食品をバランスよく食べることが大切であると思われます。加えて、洗剤や農薬については、注意事項をよく読み、適切に使用し、使いすぎないよう注意しましょう。
また、環境ホルモンの1つであるダイオキシン類の多くは、ごみの焼却過程により発生すると言われています。
ごみの分別・リサイクルや、使い捨て容器を使わないなどごみの減量に努めるとともに、ごみの野焼きをしないなど、適切なごみの処理に努めましょう。
-出所:厚生労働省「内分泌かく乱化学物質Q&A」新潟県「環境ホルモンとは何か?」より-
プラスチック製容器のうち、ポリカーボネート製のものには可塑剤(注1)として内分泌かく乱化学物質として疑われているビスフェノールAが含まれていますが、これまでにポリカーボネートから溶出するレベルのビスフェノールAがヒトに有害な影響を与えたと確認された事例はありません。
しかし、内分泌かく乱化学物質問題は新たな問題であり、微量であっても作用を引き起こすという指摘もあるため、引き続き調査を行っていくこととしています。
ポリカーボネート製のプラスチック容器の使用に際しては、説明表示をよく読み、正しい使用を心がけましょう。
(注1)可塑剤: 柔軟性を増し形成加工を容易にする添加剤
-出所:厚生労働省「内分泌かく乱化学物質Q&A」より-
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)とは 有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握・集計し、公表する仕組みです。
対象としてリストアップされた化学物質(第1種指定化学物質:354物質 H15年)を製造したり使用したりしている事業者は、環境中に排出した量と、廃棄物として処理するために事業所の外へ移動させた量とを自ら把握し、行政機関に年に1回届け出ます。
行政機関は、そのデータを整理し集計し、また、家庭や農地、自動車などから排出されている対象化学物質の量を推計して、2つのデータを併せて公表します。
PRTRによって、毎年どんな化学物質が、どの発生源から、どれだけ排出されているかを知ることができるようになります。
諸外国でも導入が進んでおり、日本では1999(平成11)年、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」により制度化されました。
この法律によって、該当の事業者の皆さんは、平成13年4月から、化学物質の排出量などを把握する必要が出てきました。
平成14年4月から、第1回目の排出量などの届出が始まり、平成15年3月には環境省及び経済産業省は第1回目の集計結果の公表を行いました。 新潟県においても、同年6月に公表しました。
-出所:環境省 環境保健部HPより-
内分泌かく乱化学物質についての研究は、国では、文部科学省(学術研究振興)、厚生労働省(人体影響・労働者保護など)、農林水産省(農薬使用・水産資源保護)、経済産業省(産業活動における管理)、国土交通省(水及び住環境保全・海洋汚染防止)及び環境省(生態系への影響、リスクコミュニケーションなど)で分担し、環境保全への各観点から様々な研究を実施しています。
県では、大気・土壌・地下水・水質(河川・海域)及び底質のダイオキシン類の調査を行っているほか、昭和48年に制定された「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に従い、昭和49年から化学物質の存在状況について継続的に調査しています。また、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、特定施設に対する指導をしています。
長岡市では、県の調査のほかに、独自に市内4河川5ヶ所についてダイオキシン類の調査を行うほか、「危険性が指摘され、あるいは指摘されていなくても疑われているものについては、極力他の安全なものに切り替えたり、使用を控える」という予防的措置として、学校や保育園で、食器洗浄に使用している合成洗剤をせっけん洗剤に切り替えたり、除草剤としての農薬の使用を自粛するといった取組を進めています。
また、HP等を利用して、化学物質に関する情報を適宜皆さんに提供しています。
近年、化学物質のもつ環境リスクを積極的に共有しようという動き(=リスクコミュニケーション)が活発となり、環境省を中心に、「教育教材の開発・斡旋、化学物質アドバイザ-制度等が始まっています。関心のある方はご活用されてはいかがでしょうか。
-出所:厚生労働省「内分泌かく乱化学物質Q&A」、「新潟県の環境」「環境に関する年次報告書」-
化学物質過敏症は、過敏という名が示すように、ごく少量の物質にでも過敏に反応する点ではアレルギー疾患に似ています。最初にある程度の量の物質に暴露されると、アレルギー疾患でいう“感作”と同じような状態になり、二度目に同じ物質に少量でも暴露されると過敏症状を来します。時には最初に暴露された物質と二度目に暴露された物質が異なる場合もあり、これは多種化学物質過敏症と呼ばれます。
さらに化学物質過敏症はこのようなアレルギー疾患様の性格だけでなく、低濃度の化学物質に反復暴露されていると体内に蓄積し慢性的な症状を来すという中毒性疾患に近い性格も兼ね備えています。
化学物質過敏症は未解明の部分が多い疾患ですが、このようなアレルギー性と中毒性の両方に跨る疾患、あるいはアレルギー反応と急性・慢性中毒の症状が複雑に絡み合っている疾患であると考えられています。
-出所:厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班「化学物質過敏症~思いのほか身近な環境問題~」より-
-参考:新潟県「化学物質過敏症をご存知ですか?」-
頭痛、全身倦怠感、不眠、便秘、動悸など特徴のない症状が多いようです。
・自律神経障害:発汗異常、手足の冷え、頭痛、易疲労性
・内耳障害:めまい、ふらつき、耳鳴り
・気道障害:咽頭痛、口喝
・循環器障害:動機、不整脈、循環障害
・精神障害:不眠、不安、鬱状態、不定愁訴
・眼科的障害:結膜の刺激症状、調節障害、視力障害
・消火器障害:下痢、便秘、悪心
・運動器障害:筋力低下、筋肉痛、関節痛、振せん
・免疫障害:皮膚炎、嘆息、自己免疫異常
アレルギー性疾患同様、その患者さんにとって合わないものであれば何でも原因物質になる可能性があります。一例として以下のものが挙げられます。
大気汚染物質、ディーゼル粉塵、排気ガス、殺虫剤、除草剤、カビ、ダニ、ちり、食品、食品添加物、残留農薬、ガス排気、洗剤、シロアリ駆除剤、建材、接着剤、ホルマリン、洗浄剤、漂白剤、芳香剤、防ダニグッズ、防菌グッズ、塗料、動物の毛
できるだけ接触する原因物質の量を少なくし、次に同様に悪化因子を除去します。悪化因子は原因物質になりうるほかの化学物質であることが多いといわれています。
それと同時に適切な食事をし、適度の休息・睡眠をとり、毎日適量の運動をし、精神的なストレスを避けて健康状態をベストに保つようにします。これだけで症状が軽快したり発症を予防できる場合が多いのですが、改善しない場合は、医療機関にご相談ください。
香水、柔軟仕上げ剤、芳香剤などの香りにより、頭痛や吐き気といった相談が全国の消費センター等に寄せられています。
香りの感じ方には個人差があり、自分にとっては心地よい香りでも、不快に感じる方もいる場合があります。香り付き製品は使用量の目安を参考に周囲の方にも配慮しながら使用しましょう。
関連リンク
その香り困っている人もいます(消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省作成) (PDF 2,267KB)
・香りへの配慮全般に関する相談:環境政策課 TEL:0258-24-0528(8:30~17:15 土曜日曜祝日年末年始は除く)
・健康に関する相談:健康増進課 TEL:0258-39-7508(8:30~17:15 土曜日曜祝日年末年始は除く)
・契約や商品購入等に伴うトラブルに関する相談:消費生活センター TEL:0258-32-0022(9:00~16:30 土曜日曜祝日年末年始は除く)
関連リンク
・厚生労働省「化学物質の安全対策サイト」
・厚生労働省「シックハウス対策」
・環境省「保健・化学物質対策」
・環境省「化学物質やその環境リスクについて学び、調べ、参加する」
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