最終更新日 2016年4月1日
より大きな地域愛へ
合併はもともと簡単に実現するものではないと私は考えています。理性では割り切れない問題を多く抱えているのが合併であり、例えば、故郷に対する愛情が強い人ほど、親しんだ市町村の名前がなくなることは苦痛であろうと思います。また、これまで地域おこしに頑張ってきた人ほど、故郷を守ってどんな困難でも乗り越えようとする気持ちも強いに違いないと思います。
私は学生時代に東京都豊島区の故三波春夫邸のすぐ近くに住んでいました。三波春夫氏は私の誇りであり友人に自慢したものでした。決して、越路町の三波春夫氏ではなく、長岡地域の、いや新潟県の三波春夫氏だったと思います。また、デパートで栃尾の油揚げの販売があれば喜んで買って帰りました。故郷というものは、時に狭くもなり広くもなるものです。故郷を愛するが故に合併に反対するとおっしゃる方に申し上げたいのは、故郷の範囲をもう少し広く据えていただきたいということです。そうすれば新しく芽生えてくる愛があるに違いないと思います。
長期的視点に立つ合併
今述べましたように、合併にはどうしても感情問題が付きまとうため、本来時間がかかるものだと思います。長岡市における昭和の大合併は、昭和29年の上川西村、宮内町、深才村等の編入合併に始まり、昭和35年の二和村の編入合併まで、実に7年間の歳月を要しました。昭和の大合併は、条件の整った地域から順次合併していくという柔軟な方式でした。栃尾市の離脱により、合併そのものを見直すべきだという意見がありますが、この歴史に学ぶ必要があろうと考えます。
平成の大合併も平成17年3月末をもって終わりであるとは考えてはいません。もちろん、平成年17年3月末は、合併特例法の適用を受ける期限としては大変重要な区切りではあります。合併するのであれば、期限内に合併すべきであることは論をまたないと考えます。しかし、特例法の期限を過ぎれば、すべて終わりと考えるのも早計です。国と地方との関係が根本的に見直されている状況の中で、地方が自立するために、合併は特例法の期限が過ぎても避けて通れない課題です。このような長期的な視点の中で、私は40万都市構想を打ち出しているのです。
市町村合併の最終目標は道州制の導入と市町村の自立
今、日本にとって最も必要な改革とは、国、都道府県、市町村という三階建て構造に終止符を打つことであると考えます。私は、国、都道府県、市町村のすべてを経験していますが、この三階建て構造が、日本の地方分権を阻害している根本要因であると考えています。三階建て構造での都道府県の存在意義は、「市町村の指導」にありますが、市民に対して、最終責任を負うのは市町村です。例えば、小学校で不祥事があったとき、市民に謝罪するのは市の教育委員会なのです。
都道府県の教育委員会は、「市町村教育委員会を指導する」だけです。それにもかかわらず、教員の採用と人事は都道府県に権限があり、教員に対する指導権限が相対的に少ない市の教育委員会が最終責任を負うことには矛盾があります。まして、長岡市長が「米百俵」にふさわしい教育政策を実施しようと思っても、極めて権限が少ないのです。
こうした矛盾を打破するためには、都道府県が合併し、外交や防衛を除いて国と同じ権能を有する道州政府となるべきであります。そして、政策の立案と実行は、最終責任者である市町村に任せるという二階建て構造こそ、日本の地方分権の最終目標であると考えます。市町村の責任と権限が増大することにより、現場に即した血の通った政策が実現することは間違いありません。
市町村の自立こそ合併の最大の目標
そのためには、市町村が自立することが前提となります。自らの頭で考え自らの足で歩くためには、当然のことながらそれなりの組織と財政力が必要です。自立するに足る組織力と財政力は、ある程度の規模により実現します。例えば、教員の採用や人事権を持つとした場合、また、都市計画を現実の生活圏に見合ったものにする場合、工業団地等の大規模開発を実行する場合等を考えたとき、小規模な市町村では実行が難しいのではないでしょうか。私は、組織力と財政力を着実に身につけた新しい市が、より広大な中越地域を行政範囲として担当することが、この地域の発展に不可欠であると考えています。中越地域全体の発展を心から願うゆえの合併なのです。
地域自治について
任意協議会で検討を進めてきた地域自治組織は、長岡市が周辺市町村の編入を円滑化するための駆け引きの材料ではありません。むしろ、実質的に合併後の新市の運営を名実ともに血の通ったものにし、共存共栄を図るために不可欠な仕組みであると考えています。
それぞれの市町村には長い歴史があり、行政組織がひとつになったからといって、すぐに気持ちがひとつになることはありえません。だからこそ制度を一体化して市民の気持ちをひとつにすべきであるという意見もありますが、一体化は自然に行われれば良いのではないでしょうか。例えば、長岡市の関原地区は、昭和半世紀近くになりますが、商工会は関原地区商工会として独立しており、また、関原まつりは盛大に行われる等、地域の自立意識が旺盛です。このような地域の独自性や自立意識は、大切に残すべきものではないでしょうか。このような自立意識は、お互いを刺激しあって高めあうために必要です。市民の意識に即して緩やかな一体化を進め、共存共栄を図ることは、理にかなっている選択肢であると思います。合併したからといって、すべてが一体化しなければならないと考える必要はないのです。
今後の進むべき道
長岡地域の合併は共存共栄の精神のもとそれぞれの地域がお互いに尊重し高めあいながら新しいまちづくりに取り組むという基本理念を念頭において、今後も合併を着実に推進していきたいと思います。
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