○長岡市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例
令和2年12月14日
条例第39号
目次
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 保存建築物の登録等(第3条―第7条)
第3章 保存建築物等に関する制限
第1節 現状変更の規制(第8条―第12条)
第2節 保存のための措置(第13条―第18条)
第4章 雑則(第19条―第23条)
第5章 罰則(第24条―第27条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、地域固有の歴史的又は文化的な価値を有する建築物(以下「歴史的建築物」という。)について、これらの価値を良好な状態で将来の世代に継承するとともに、安全性の維持及び向上を図り、その保存及び活用(利用を含む。以下同じ。)を促進するため、建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「法」という。)第3条第1項第3号に規定する建築物に講じる現状変更の規制及び保存のための措置について、必要な事項を定めることを目的とする。
(1) 対象建築物 次の各号のいずれかに該当する歴史的建築物をいう。
ア 文化財保護法(昭和25年法律第214号)第57条第1項の規定により登録された有形文化財
イ 景観法(平成16年法律第110号)第19条第1項の規定により指定された景観重要建造物
(2) 移築 建築物を他の敷地に移して新築することをいう。
(3) 増築等 建築物の増築、改築、移転、移築若しくは用途の変更又は修繕若しくは模様替をいう。
(4) 保存活用計画 対象建築物の保存及び活用に係る計画であって、次に掲げる事項を定めたものをいう。
ア 対象建築物の保存を図りながら、これを活用するために必要な増築等の工事の内容に関する事項
イ 対象建築物の安全性に関する事項
ウ 対象建築物の維持及び管理に関する事項
(5) 保存建築物 次条第1項の登録を受けた対象建築物をいう。
(6) 保存対象敷地 保存建築物が存する敷地(保存建築物の移築をする場合にあっては、移築後の敷地)をいう。
2 前項に定めるもののほか、この条例における用語の意義は、法及び建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)に定めるところによる。
第2章 保存建築物の登録等
(保存建築物の登録)
第3条 対象建築物の所有者は、当該対象建築物の保存及び活用を図るため、法第3条第1項第3号に規定する特定行政庁の指定(以下「特定行政庁の指定」という。)を受けることが必要であると認めるときは、当該対象建築物について保存活用計画を策定し、市長の登録(以下「保存建築物の登録」という。)を受けることができる。
2 市長は、保存建築物の登録をしたときは、当該保存建築物について、特定行政庁の指定を受ける手続を行うものとする。
(登録の申請等)
第4条 対象建築物の所有者は、保存建築物の登録を受けようとするときは、当該対象建築物の保存活用計画その他規則で定める図書を添付して、市長に申請をしなければならない。
2 前項の申請をしようとする対象建築物の所有者は、当該対象建築物の敷地(その保存活用計画において当該対象建築物の移築をすることとされている場合は、移築後の敷地)に、当該対象建築物の所有者以外の所有者又は借地権その他当該敷地を使用する権利を有する者があるときは、あらかじめ当該申請の内容について、これらの者の同意を得なければならない。
(登録の手続)
第5条 市長は、前条第1項の申請があった場合は、これを審査し、当該申請に係る対象建築物の保存及び活用を図るために特定行政庁の指定を受ける必要があり、かつ、当該対象建築物の保存活用計画に安全上、防火上、交通上及び衛生上の支障がないと認めるときは、当該対象建築物について保存建築物の登録をするものとする。
2 市長は、保存建築物の登録をしようとする場合は、あらかじめ、長岡市建築審査会条例(昭和55年長岡市条例第21号)第1条に規定する長岡市建築審査会の意見を聴くとともに、その同意を得なければならない。
3 市長は、保存建築物の登録をしようとする場合は、消防長又は当該保存建築物が所在する区域を管轄する消防署長に意見を聴くことができる。
4 市長は、保存建築物の登録をしたときは、その旨を当該保存建築物の登録の申請をした対象建築物の所有者に通知しなければならない。
5 市長は、保存建築物の登録をしたときは、速やかにその旨を公告するとともに、規則で定める図書を一般の縦覧に供さなければならない。
6 保存建築物の登録は、前項の公告により、その効力を生じるものとする。
(登録の変更)
第6条 保存建築物の所有者は、当該保存建築物の保存活用計画の変更(規則で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、市長に変更の登録の申請をしなければならない。この場合において、第4条第2項の規定は、当該変更の登録の申請について準用する。
2 市長は、前項の申請があった場合は、これを審査し、当該申請に係る保存活用計画の変更が当該保存建築物の保存及び活用を図るために必要であり、かつ、当該変更後の保存活用計画について安全上、防火上、交通上及び衛生上の支障がないと認めるときは、当該保存活用計画について変更の登録を行うものとする。
(登録の取消し)
第7条 市長は、保存建築物が次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、速やかに当該保存建築物の登録を取り消さなければならない。
(1) 法第3条第1項第1号又は第2号に規定する建築物に該当することになったとき。
(2) 滅失したとき。
(3) 毀損その他の事由により保存建築物の登録をする理由が失われたとき。
2 市長は、保存建築物について公益上の理由その他特別な理由があると認めるときは、当該保存建築物の登録を取り消すことができる。
4 市長は、保存建築物の登録を取り消したときは、速やかに当該保存建築物の所有者に通知するとともに、その旨及びその理由を公告しなければならない。
5 市長は、保存建築物の登録を取り消したときは、速やかに当該保存建築物について、特定行政庁の指定を解除する手続を行うものとする。
第3章 保存建築物等に関する制限
第1節 現状変更の規制
(現状変更の規制の原則)
第8条 保存建築物の現状の変更は、当該保存建築物の保存活用計画に従い、この条例の定めるところにより行われなければならない。
(増築の許可等)
第9条 保存対象敷地内において保存建築物その他建築物の増築等をしようとする者又は保存建築物についてその形状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、あらかじめその行為について市長の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、規則で定める軽易な行為及び災害のため必要な応急措置として行う行為は、この限りでない。
2 前項の許可は、当該許可に係る工事が法第6条第1項若しくは法第6条の2第1項(法第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による確認の申請又は法第18条第2項(法第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による通知を要するものである場合は、当該申請又は通知を行おうとする日前に受けなければならない。
4 市長は、第1項の許可をするに当たり、当該許可に係る保存建築物の保存のため、必要な条件を付することができる。
5 第1項の許可に係る工事は、当該許可を受けた後でなければ、これを施工してはならない。
(完了検査)
第10条 前条第1項の許可を受けた者は、当該許可に係る工事を完了したときは、市長の検査を受けなければならない。
3 市長は、前項の申請があったときは、その日から7日以内に、当該申請に係る検査を行うものとする。
4 市長は、第1項の検査をした場合において、当該保存建築物がその許可の内容に適合すると認めたときは、その旨を当該検査を受けた者に通知するものとする。
2 前項ただし書の仮の使用の承認を受けようとする保存建築物の所有者は、市長に申請をしなければならない。
(1) 第9条第1項の許可を受けていない場合
(2) 第9条第1項の許可の内容に違反している場合
(3) 第9条第4項の規定により付した条件に違反している場合
第2節 保存のための措置
(保存のための措置の原則)
第13条 保存建築物の所有者は、当該保存建築物の保存活用計画に従って、当該保存建築物の保存及び活用を図らなければならない。
(保存管理責任者の選任等)
第14条 保存建築物の所有者は、当該保存建築物について、前条に定めるところにより保存及び活用を行わせるため、当該保存建築物の管理に関する責任者(以下「保存管理責任者」という。)を選任することができる。
2 保存建築物の所有者は、前項の規定により保存管理責任者を選任したときは、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。保存管理責任者を変更し、又は解任したときも、同様とする。
3 保存建築物の所有者は、保存管理責任者について届け出た事項に変更があったときは、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。
(所有者の変更の届出)
第15条 売買その他所有権の移転により新たに保存建築物の所有者になった者は、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。
(維持管理の報告等)
第16条 保存建築物の所有者又は保存管理責任者は、当該保存建築物の維持管理がその保存活用計画に従っていることについて、5年ごとにその状況を調査し、その結果を市長に報告しなければならない。
2 市長は、前項に定めるところによるほか、必要があると認めるときは、保存建築物の所有者又は保存管理責任者に対して、当該保存建築物の現状又は管理若しくは工事の状況について、報告若しくは資料の提出を求め、又は命じることができる。
(管理に関する助言等)
第17条 市長は、保存建築物の所有者又は保存管理責任者に対し、当該保存建築物を保存するために必要な助言をすることができる。
2 市長は、保存建築物の構造若しくは建築設備に不備があり、又は保存建築物若しくは保存対象敷地の管理が適切でないため、当該保存建築物の損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば保安上著しく危険な状態となり、又は衛生上著しく有害となるおそれがあると認める場合は、当該保存建築物の所有者又は保存管理責任者に対し、相当の猶予期間を付して、管理の方法の改善その他保存建築物又は保存対象敷地の管理に関し必要な措置を執るよう勧告することができる。
3 市長は、前項の勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に係る措置を執らなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期間を付して、当該勧告に係る措置を執るよう命じることができる。
(保存に係る監督処分)
第18条 市長は、保存建築物の保存について、次の各号に該当すると認める場合は、相当の猶予期限を付して、当該保存建築物等の増築等、外観の変更、除却、使用禁止、使用制限その他必要な措置を命じることができる。
(1) 保存建築物に第12条第1項各号に該当する工事が行われたため、当該保存建築物の保存がその保存活用計画に従って行われなくなった場合
(2) 前号の場合のほか、保存建築物の保存がその保存活用計画に従って行われないため、当該保存建築物の保存に重大な支障が生じた場合
第4章 雑則
(保存建築物の所有者の変更に係る措置)
第19条 この条例の規定に基づき保存建築物に関し行われた登録、許可、命令その他の処分に係る当該保存建築物の所有者の法律上の地位は、売買その他所有権の移転により新たに当該保存建築物の所有者となる者に承継されるものとする。
(建築士法の適用)
第20条 第9条第1項本文に規定する行為に係る保存建築物の工事に関し、その設計、工事監理及び構造設計について建築士法(昭和25年法律第202号)に定めがある場合は、同法に定めるところによるものとする。
(行政手続条例の適用除外)
第21条 長岡市行政手続条例(平成8年長岡市条例第1号)第13条の規定は、次の各号に該当するときは、適用しない。
(3) 第12条第1項の規定により工事の停止を命ずる場合及び同条第2項の規定により作業の停止を命じる場合において、当該措置に係る違反が明らかであると認められ、かつ、緊急に当該措置を命ずる必要があるため長岡市行政手続条例第13条第1項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないとき。
(立入調査等)
第22条 市長は、この条例の施行に必要な限度において、市長が指定する職員に、保存対象敷地若しくは保存建築物等に立ち入り、その状況を調査させ、必要な検査をさせ、又は関係者に質問をさせることができる。ただし、住居に立ち入るときは、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。
2 前項の規定により立入調査、立入検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第1項に規定する立入調査、立入検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(委任)
第23条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
第5章 罰則
第25条 次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
(2) 第9条第4項の規定により市長が付した条件に違反して、保存対象敷地内において保存建築物その他建築物の増築等をした者又は保存建築物についてその形状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をした者
(3) 第10条第2項の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をした者
(4) 第12条第2項の規定による市長の命令に違反した者
(5) 第16条第2項の規定に基づき市長が提出を命じた報告若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告若しくは資料を提出した者
(6) 第17条第3項の規定により市長が命じた措置を執らなかった者
第26条 第22条第1項の規定による立入調査若しくは立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述せず、若しくは虚偽の陳述をした者は、10万円以下の罰金に処する。
第27条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前3条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和3年2月1日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の際現に解体され、その建築材料の全部又は一部が保管されている建築物で、当該建築材料の全部又は一部を用いて原形を再現しようとするものについては、解体されていないものとみなして、この条例の規定を適用する。