最終更新日 2022年4月3日
革新的な経営を行っている市内企業のトップにインタビューし、経営の秘訣に迫るインタービュー記事シリーズ「ザ・イノベーションカンパニー」。
事業者の皆様や勤労者の皆様が新たな道を切り開くヒントとして、ぜひご一読ください。
―急激な時代の変化に合せ、メカトロニクスから電子デバイスへ
ケミコン長岡は、日本ケミコン株式会社のグループ会社の一員として1982年に長岡の地に創業して以来、レコードプレーヤーのトーンアームを皮切りに、時代の変化に合わせた商品を提供し、現在は自動車の回生エネルギーの蓄電デバイスである電気二重層キャパシターやドライブレコーダーのカメラモジュールを主力商品としています。
この電気二重層キャパシターは、半導体工場の瞬時電圧低下対策や再生可能エネルギーの蓄電にも有効であり、また、当社のカメラ技術は、生体認証やQRコードリーダなどにも生かされています。
―人手不足・品質安定化・コスト削減を目指し、協働ロボットを導入
2013年夏、都内で開催された展示会に、以前、TVCMで観た双腕型の協働ロボットが展示してあり、出展企業にデモを依頼。数日後、車の荷台で運ばれてきたロボットは、電源を入れるとすぐ動き出したことに衝撃を受けました。
「こんなに簡単に動かせるなら、生産ラインに使えると直感しました。」
そこから市原氏の挑戦が始まりました。
―ロボットと人の協働作業による効率的な生産現場を実現
現在、ケミコン長岡では、87名の従業員のほか、双腕型協働ロボット7台と6軸多関節産業ロボット11台が稼働しています。
カメラを搭載した双腕型協働ロボットは、動作も人間の真似させることで、多品種少量生産で、多種類ある製造ラインの日々の生産量の変化対応し、ロボットをボリュームのあるラインに素早く移しかえることができます。
「ロボットを導入すると、つい全てを自動制御にしたがるが、ロボット自身と外部設備にはインターフェースは持たせない。 人がやっているようにロボット自身が設備画面を認識し、操作スイッチを押すことで人の作業と同じことを実現させている。ロボットに向いている仕事、人間に向いている仕事があり、全てをロボットにやらせるのではなく、人間とロボットの協業によるシナジーを大切にしている。」と市原氏は語る。
また、「人とロボットは違う。人がやること ロボットにやらせた方がいいことの見極めが難しい。例えば、不定形のケーブルを配線させる作業はロボットには難しい。何でもロボットにやらせようとするのは非効率。人とロボットが補完しあいながら、協働による作業の黄金比率を追及している。」
―ロボットがリクルートに貢献
双腕型協働ロボットは、作業内容に応じてロボット自身がカメラで得た画像を認識し、ワークに適したエフェクター(ハンド)に自分で交換するなど、複雑な作業に対応することができる。「今後の製造現場の人手不足は大きな問題である。会社によっても違うが、高卒の生涯賃金が約2億円と考えるとロボットはそんなに高い買い物ではない。特に運搬や検査など、利益を生まない工程はロボットなどにより自動化し、人間は利益を生む作業に集中する必要がある。」これからはロボットへの投資ではなく、ロボットの採用という考え方になる。そのため、同社ではロボットを導入するのではなく雇用すると言っています。ロボットに名札を付け、人間のように接しています。」と市原氏は語る。
「最近は、当社が入会している「NPO法人 長岡産業活性化協会NAZE」の会員企業からの見学も頻繁にある。また、ロボットの導入を見て、当社への就職を決めた社員もいる。
ロボットがリクルートに貢献した一例である。」とのお話もいただいた。
【~取材を終えて~】
同社は、この長岡の地に開業して以来、急激な時代の変化に対応し、主力製品を変えてきた。特に、市原氏が代表取締役に就任してから、様々な工夫を通じ、人とロボットが協働で作業する黄金比率を追求し続けている。
多品種少ロットのものづくり地域である長岡において、これからの人手不足になっていくものづくり現場をどうしていくか、同社の取り組みは一つの会になりえると考える。
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