最終更新日 2022年3月2日
革新的な経営を行っている市内企業のトップにインタビューし、経営の秘訣に迫るインタービュー記事シリーズ「ザ・イノベーションカンパニー」。
事業者の皆様や勤労者の皆様が新たな道を切り開くヒントとして、ぜひご一読ください。
残業ゼロの達成や男性の育休取得率100%など、働き方改革のリーディングカンパニーとして全国的に名高い金属屋根部品メーカー・サカタ製作所(長岡市与板町)。1951年に先代の省司さんが創業した同社は、今や金属屋根部品において国内販売のトップシェアを誇り、現在はソーラーパネル取付金具の国内トップクラスメーカーとしても成長中です。今回は、そんなサカタ製作所の創業者の息子で二代目社長の坂田匠さんにインタビューさせていただきました。
2019年には「ホワイト企業アワード」で並みいる大企業を制して最優秀賞を獲得するなど、現在も様々な賞を取り続けている坂田社長に同社の働き方について伺いました。実は、以前は長時間労働が当たり前だったとか...。そこから“超”ホワイト企業と言われるまでの道のりをご紹介します。
――働き方改革を行おうと思ったきっかけと、残業ゼロをどのようにして達成されたのか教えてください。
きっかけは2014年11月におこなった、全社集合での講演会です。その際に、「サカタ製作所はこれまで見てきたどの企業よりも、ダメ」とはっきり言われたんですね。これはチャンスだと反射的に思いました。講演直後に立ち上がり、いきなり社員全員の前で「残業をゼロにする」と宣言。社員は当然驚いていました。初めは社員から利益や納期の心配をされましたが、そこは利益が落ちても問題ないとはっきり明言しました。ただ、「お客様の信用をなくすかもしれない」と言われたのは悩みましたね。しかし、ここで折れたら絶対に達成できないという思いで強い姿勢を保ちました。
ただ、達成できたのは社員1人1人の工夫によるものです。業務をなるべく標準化・ローテーション化することで属人化業務の廃止、業務が集中する時間に合わせた時差出勤、ITの推進による業務の効率化・情報の共有、いずれも社員のアイデアです。利益が落ちてもいいと明言しましたが、それでいいと思っていた社員はうちには1人もいなかったんですね。「残業ゼロ」という大きな目標を掲げたからこそ、そのために1人1人が必死で色んなアイデアを出すんです。生産性を高めて残業をゼロというやり方では、私は絶対に達成できないと思っています。実際、社長が全て指示してしまうよりも、こっちの方が結果的にうまくいくと思いますね。
――男性の育児休業取得率も100%ということですが、どのような取り組みを行われていますか。
実は、私も最初は男性が育休をとれることを知らなかったんですよ。最初は、社員の育休取得の相談を受けたことから始まり、相談に来た彼の部署に出向いたりもしました。2人目も同じで、そこからは皆自然と取得するようになっていきました。現在は、会社として育児休業取得率の目標設定、不安要素の1つである収入面のシミュレーションの実施で取得社員の不安をフォローする体制づくりをしています。また、制度を整えるだけでなく属人化しないような働き方を進めていることで、育児休業だけでなく有給休暇も取りやすい環境になっています。属人化の解消が一番取得のハードルを下げていると思いますね。少し前までは、育休を取った人と、取らせた上司を表彰する制度があったのですが、今となっては育休を取るのが当たり前すぎてやっていません。
――貴社は新型コロナが流行する前からテレワークを行っていたと伺いました。
中小企業にしてはいち早くテレワークを取り入れ制度を整えてきましたが、新型コロナの影響で更に加速し、手当面やネットワーク環境の整備、自宅での業務に必要な備品等も支給することで、会社に出社して作業するのとほぼ変わらないスピードで業務ができる環境を整えています。現在は本社事務所の半分以上がテレワークしており、日によっては出社している社員は3分の1程度の時もあります。
東京・大阪にも支店・営業所がありますが、出社している社員はほとんどおらず、大体10%くらいです。私自身も今日(取材日)出社するのは久しぶりなんです。そのくらいテレワークは進んでいます。
――貴社には優秀な方が多いと思うのですが、どのように人材確保を行っていますか。
正直な話ですが、弊社の金属屋根部品を作りたくて作りたくしょうがないと思って入社した社員はほとんどいないと思います。ですが、それでも全国から優秀な人材が集まるのはやっぱり充実したワークライフバランスの実現が大きいのではないでしょうか。いずれは長岡市のどの企業を見ても労働環境がしっかりと整備されていて、採用活動に大きく力を入れなくても、優秀な人材に働き方で選ばれるような都市になればいいなと思っています。
――今後、力を入れていきたい事業について教えてください。
赤字続きだったソーラーパネル取付金具が、昨年やっと黒字に転換しました。屋根設置用金具にこだわってずっと開発し続けてきましたが、それが実を結び、現在は増産増産で毎月売り上げを更新しています。黒字になったことを喜ぶのではなく、この黒字を他の新規事業の立ち上げに使いたいと思っています。今後力を入れていきたいのは「拡散接合」という技術です。拡散接合とは異種金属同士を原子レベルで一体化させるものです。現在は東京を拠点として開発を行っていますが、新潟県内でも生産を行っていく予定です。これが黒字になったら、また次の開発の種となる事業の赤字をそこで補っていく。これの繰り返しですね。
――最後に、現在も働き方に関する様々な賞を受賞されていますが、今後目標にしている賞などはありますか。
賞や認定を取るために行動することも大事ですが、一番いいのは“結果的に”取れることだと思います。私自身、基本的には「この賞を取りたい」と思って社内改革を行っているわけではありません。例えば、弊社は「ラジオ体操優良団体等表彰」を受賞しましたが、ラジオ体操は昔からずっと行っていたことですし、これが表彰されるなんて思いもしなかったです。だって当たり前でしたから。このように、自社で当たり前のようにやっていることが実は世間とずれている、“ずれ”が受賞に繋がっています。なので、目標としてはそのずれを見つけていくことですかね。
(ふと窓を見て)結構雪が降ってますね。今日は大雪のようなので、社員も早めに帰らせることにします。
「社会に必要とされるものづくりを通じて社会に貢献し続けます!」
――坂田匠 談(力強く)
※1「OEM」・・・・製造メーカー(OEMメーカー)が他社(発注元)の名義やブランドの製品を製造する、もしくはその受託側企業のこと。
【~後日談 取材を終えて~】
余談なのですが、実はサカタ製作所といえばかき氷が有名なんです。始まりは当時、肺がんを患っていた創業社長の坂田省司氏が「今度会社を起こすとしたら、人々を笑顔にさせる食の仕事がしたい」と病床で胸の内を語ったこと。振り返れば、サカタ製作所はカンナ事業で創業。時代と共にカンナは電動工具にとって代わられ、現在は建築金具の製造がメインとなり、カンナは全く製造していません。そこで、「カンナの技術を使ったサカタ製かき氷機を作りたい、そして一番に創業社長に食べて元気になってもらいたい」――これが、かき氷機製造プロジェクトの始まりとのことです。そして、2016年11月にプロトタイプが完成。現在はお客様にお茶代わりにふるまっています(おいしすぎると評判です)。
今回紹介できなかった秘話が盛りだくさんの、サカタ製作所のかき氷機に関する記事はぜひこちらをご確認ください。(な!ナガオカ記事)
最後になりますが、坂田社長に取材のお礼を申し上げるとともに、皆さんと一緒にかき氷を写真で楽しんで締めくくりたいと思います。坂田社長、貴重なお時間ありがとうございました!(写真提供:サカタ製作所訪問者)
このページの担当