○長岡市食育基本条例
平成26年3月31日
条例第26号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第8条)
第2章 食育推進計画(第9条)
第3章 基本的施策(第10条―第15条)
第4章 推進体制(第16条)
第5章 雑則(第17条―第19条)
附則
私たち長岡市民は、守門岳をはじめとした山々の清らかな雪解け水で育つ山の幸、日本一の大河・信濃川など多くの河川の恵みで育つおいしい米や野菜、そして日本海でとれる海の幸など、豊かな自然と風土に適した食により暮らしを営み、伝統ある郷土の食文化を守り育ててきた。
食は命の源であり、健全な心身を培い、豊かな人間形成の基礎となるものである。しかし、近年、グローバリゼーションの進展等により社会経済情勢が著しく変化する中で、栄養の偏りや不規則な食事等に起因する生活習慣病の増加、食の安全に対する不安の高まり、食料の海外への依存、食料の生産・流通・消費の変化に伴う地域内経済循環の低下と環境への影響、和食文化の衰微など、様々な問題が生じている。
このような食をめぐる環境の変化の中で、私たち市民一人ひとりが様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を身につけ、健全な食生活を実践することができるように、食育を推進していくことが重要である。中でも、未来を担う子どもたちへの食育は、生きる力が身につくよう着実に取り組まれる必要がある。
ここに本市は、食育に関する基本理念を明らかにし、市民、行政、教育関係者、事業者等の協働により、食育に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、食育に関し、基本理念を定め、市の責務及び地域社会との協働のあり方等を明らかにするとともに、食育の推進に関する施策の基本事項を定めることにより、市民一人ひとりが食を楽しく学び、日常生活に生かすことによって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことができるよう、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、生涯健康で文化的な生活の実現に寄与することを目的とする。
(1) 食育 様々な経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることをいう。
(2) 教育関係者等 教育等(教育、保育、介護その他の社会福祉並びに医療及び保健をいう。以下同じ。)に関する職務に従事する者並びに教育等に関する関係機関及び関係団体をいう。
(3) 事業者等 農産物等の生産にかかわる者(農業、畜産業、林業又は水産業(以下「農業等」という。)を営む者をいう。)及びそれらの者が組織する団体(以下「農業者等」という。)並びに食品の製造、加工、流通若しくは販売又は食事の提供を行う事業者及びその組織する団体(以下「食品関連事業者等」という。)をいう。
(基本理念)
第3条 食育は、食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたって健全な食生活を実現することにより、市民の健康の増進と豊かな人間形成に資することを旨として行われるものとする。
2 食育は、食生活が自然の恩恵及び食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについて、市民の感謝の念や理解が深まるよう配慮して推進されるものとする。
3 食育は、食品の安全性をはじめとする食に関する幅広い情報の提供及び交換により、市民の食に関する知識と理解が深まり、適切な食生活を実践できるよう国、県及び関係機関と連携して行われるものとする。
4 食育は、地域において伝えられている優れた食文化及び旬や地域の特性を生かした豊かな食生活を尊重し、これらが次の世代に伝承されるよう配慮して推進されるものとする。
5 食育は、食料の生産者と消費者との交流等を図ることにより、地域の農産物等への市民の理解が深められ、食料を生産する地域の活性化に資するよう推進されるものとする。
6 食育は、自然を大切にする心が育まれるよう行われるとともに、食料の生産から消費に至る過程における環境への影響について市民の知識を深め、環境に配慮した食生活を営むことにより、地球環境の保全に寄与するよう推進されるものとする。
7 食育は、家庭、地域その他のあらゆる機会及び場所を利用して、食に関する様々な体験活動を行うとともに、自ら食育の推進に関する活動を実践することにより、食に関する理解を深めることを旨として行われるものとする。
8 食育は、父母その他の子どもの保護者にあっては、家庭が食育において重要な役割を有していることを認識することにより、子どもの教育、保育等を行う者にあっては、教育、保育等における食育の重要性を十分自覚することにより、これらの者が積極的に子どもの食育の推進に関する活動に取り組むこととなるよう行われるものとする。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める食育に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。
2 市は、食育の推進に当たっては、地域の特性を生かすとともに、国及び他の地方公共団体と連携し、広域的な推進に努めるものとする。
3 市は、市民、教育関係者等及び事業者等との協働により、食育の推進に取り組むよう努めるものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、食に関する知識を深め、適切な判断力を養うよう努めるものとする。
2 市民は、家庭、地域その他の社会のあらゆる分野において、健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、市が実施する食育の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
3 父母その他の子どもの保護者は、食生活の中で子どもたちが健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことができるように、必要な指導等を行うよう努めるものとする。
(教育関係者等の役割)
第6条 教育関係者等は、基本理念にのっとり、教育等に関する分野において積極的に食育を推進するよう努めるとともに、他の者の行う食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。
2 食物、栄養等にかかわる教育関係者等は、前項に規定する食育の推進に当たっては、専門的知識を生かし、主導的な役割を果たすよう努めるものとする。
(農業者等の役割)
第7条 農業者等は、基本理念にのっとり、農業等に関する様々な体験の機会の提供及び消費者との積極的な交流を図ることにより、自然の恩恵及び農業等の重要性について市民の関心及び理解が深まるよう努めるとともに、教育関係者等と相互に連携し、食育の推進に関する活動を行うよう努めるものとする。
2 農業者等は、安全性が確保され、安心して消費できる食料の生産及び供給に努めるものとする。
(食品関連事業者等の役割)
第8条 食品関連事業者等は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、自主的かつ積極的に食育の推進に自ら努めるとともに、市が実施する食育の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 食品関連事業者等は、安全性の高い食品の提供に努めるとともに、市民への食に関する幅広い情報提供を行うよう努めるものとする。
第2章 食育推進計画
(推進計画)
第9条 市長は、食育基本法(平成17年法律第63号。以下「法」という。)第18条第1項の規定により、長岡市食育推進計画(以下「推進計画」という。)を作成するものとする。
2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 食育の推進に関する基本方針
(2) 食育の推進に関する目標
(3) 食育の推進に関する施策
(4) 前3号に掲げる事項のほか、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な事項
第3章 基本的施策
(健康な体を保つための取組の推進)
第10条 市は、健全な食生活による心身の健康の維持又は増進を図るため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 食及び健康増進に関する市民の理解を深めるために講演会、講座その他必要な情報提供等を実施すること。
(2) 子どもの成長や発達段階に応じた栄養指導、生活習慣病を予防するための食生活の指導、食物アレルギーへの対応に関する指導その他の健康管理に関する指導の充実を図ること。
(豊かな心を育むための取組の推進)
第11条 市は、子どもの豊かな心を育むため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 子どもとその保護者が食事についての望ましい習慣を学びながら食を楽しむことができる機会を提供すること。
(2) 農業体験等を通じて、子どもの食に関する理解を促進すること。
(3) 小学校、中学校、幼稚園及び保育所(以下「学校等」という。)における食育の推進に関する指導体制の充実を図ること。
(食品の安全性等が確保されるための取組の推進)
第12条 市は、食品の安全性及び信頼性が確保されるとともに、市民が食に関する適切な判断力を養うことができるようにするため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 事業者等が法令の遵守の徹底を図ることができるよう、必要に応じて食品の安全に関する情報を正確かつ迅速に提供すること。
(2) 安全な食料の生産及び供給を担う人材の育成が図られるようにするための支援を行うこと。
(3) 食品表示の見方その他の食品に関する知識及び理解を深めるための市民への情報提供並びに消費者団体への支援を行うこと。
(地域の豊かな食文化を守り、次世代にわたすための取組の推進)
第13条 市は、地域の食文化の継承及び農産物等の地産地消(地域で生産された農産物等をその地域で消費することをいう。)を推進するため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 伝統的な行事や作法と結びついた食文化、旬を生かした地域の特色ある食文化等の啓発及び普及を推進すること。
(2) 地域で生産された優れた農産物等の学校給食等における利用その他の地域内における消費の促進を図ること。
(環境を未来に引き継ぐための取組の推進)
第14条 市は、自然を大切にする心が育まれ、環境に配慮した循環型社会の実現が図られるよう、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 学校等及び地域において、食に関する環境教育に取り組むこと。
(2) 環境と調和のとれた農業等を普及させるための支援を行うこと。
(3) 食品廃棄物の発生の抑制及び再生利用等の環境に配慮した食生活の普及を図ること。
(食育推進活動の展開)
第15条 市は、食育の推進に関する活動を、市民、教育関係者等、事業者等その他の食育に関する関係者(以下この条において「食育関係者」という。)との連携により進めるため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 食育の推進に関する普及啓発を図るための行事の実施及び重点的かつ効果的に食育の推進に関する活動を推進するための期間を指定すること。
(2) 食育の推進に関する専門的知識を有する者の養成及びその活用等を図ること。
(3) 食育の推進に関する活動を自発的に行う食育関係者相互間の情報及び意見の交換が促進されるよう市が必要と認める支援を行うこと。
(4) 食育の推進に関する活動に携わるすべての者との連携と協力を図りながら、その活動の充実が図られるよう支援を行うこと。
第4章 推進体制
(推進会議)
第16条 市は、法第33条第1項の規定に基づき、長岡市食育推進会議(以下この条において「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項について審議する。
(1) 推進計画の策定及び実施に関する事項
(2) 前号に掲げる事項のほか、食育の推進のために市長が必要と認める事項
3 前2項に定めるもののほか、推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、別に定める。
第5章 雑則
(財政上の措置等)
第17条 市長は、食育の推進のために、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
(年次報告)
第18条 市は、毎年度、食育の推進に関する施策の実施状況について報告書を作成し、これを公表するものとする。
(委任)
第19条 この条例の施行に関し必要な事項は、別に定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成26年4月1日から施行する。