長岡空襲から78年 開館20周年

戦災資料館とつなぐ 平和への想い

 昭和20年8月1日——。1、488人の尊い命を奪い、市街地の8割を焼け野原にした長岡空襲。
 今年、開館 20周年を迎えた長岡戦災資料館でボランティアとしてこの史実を次世代に伝えてきた山田文さんが、戦争の悲惨さや平和の大切さを語りました。
【問】庶務課 ☎ 0258-39-2203
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山田 文(ふみ) さん
看護師の資格を持つ山田さんは今年で95歳。4年前まで17年間、戦災資料館のボランティアとして小・中学校などで自身の体験を語ってきました。

 空襲当時、私は17歳。柏町にあった外科医院の新米看護師でした。午後からいくつかの手術があり、夕食後にも緊急手術がありました。手術後、後片付けもしないうちに警戒警報が鳴ったため、患者さんには庭の防空壕に入ってもらいました。しばらくすると空襲警報が鳴り響き、宮内方面に火の手が上がりました。
 院長の「逃げろ!」の大声で着の身着のまま、手術後3日の患者さんの腕を肩に掛け、悠久山を目指して逃げました。田んぼのあぜ道にやっと腰をき、見上げた山の方はきれいな星空で真っ白な月。それとは反対に町は真っ赤な火の海で、空は真っ黒く、恐ろしさを感じました。
 3日の朝、私は救急要員として、救護所となっていた今の阪之上小学校に向かいました。そこにはやけどの人、直撃した焼夷弾で血がにじんでいる人、うめき声や悲鳴があふれ本当に地獄のような光景でした。タオルもなく、やけどの治療で冷やしてやることさえできませんでした。
 勤め先の医院のあたりは焼け野原になっていました。1日の夜に手術をした人が桜の木と同じように真っ黒な姿で亡くなっており、驚きと怖さで心が凍る思いをしました。熱風の中で呼吸もできず体も動かせず、どんなに苦しかったかと想像すると今でも涙が出てきます。
 終戦を迎えた夜、電灯がまぶしいほど明るく、もう逃げなくてもいいとうれしく思いました。でも、その後の暮らしは大変なものでした。自宅の焼け跡に小屋を建て、焼夷弾の衝撃で土に埋もれた鍋やお皿を掘り出し、その日その日を過ごしました。配給された腐りそうな食べ物の味と臭いは忘れられません。
 12月には、市内で切腹した男性の処置に行きました。一命を取り留めた男性からは理由を聞くことができませんでした。当時の国民感情から「聞かなくてもわかるだろう」と言われそうで…。戦争が終わっても、戦争から開放されない何かが心の中にあるのかなぁと思いました。
 戦争をしても誰一人として幸せになる人はいません。こんな残酷で悲しい思いは、若い人には決してしてほしくありません。

夫の後押しが体験を語るきっかけに

 あるとき、長岡空襲を語る会で体験を話してほしいと知人から依頼がありました。一度は断ったものの夫から「お前しか知らない話があるんだから、伝えていった方がいい」と背中を押され、自分のできることをしようと思い、引き受けました。
 その後、戦災資料館のボランティアにも声が掛かり、展示物の張り替えくらいなら無理なくできると参加しました。
 ボランティアの先輩には、語り部の七里アイさんや金子登美さんなどがいました。ご自身の悲しい体験を熱心に語る姿に心を動かされ、活動の原動力になりました。

空襲があった史実をずっと語り継いでほしい

 私が子どもたちに話をするときはいつも、毎日が平凡でも事故や病気がないことが本当の幸せだよと伝えました。
 語った後に子どもたちから届いた手紙には、「今の平和が当たり前だと思わず、戦争のない平和な世の中にしたい」などとありました。戦争にしっかりと向き合い書いてくれた1枚1枚の手紙は、私がボランティアをしてきた証しとなっています。
 市民のみなさんには、戦争や空襲があったことにもっと関心を持って、今の生活が当たり前じゃないと思ってほしいです。平和の尊さや戦争の残酷さを伝える上で、資料館は重要な役割を担っています。
 現在、多くの若い人がボランティアに参加していることをとても頼もしく感じています。心あるボランティアのみなさんに、次の世代までしっかりと伝えていってもらえるよう願っています。

私の一言が子どもたちの心に残っただけで
ありがとうという気持ちです。

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アオーレ長岡での「長岡空襲の体験を聞く会」(7月9日)。山田さんは涙しながら当時の体験を語り、若い世代に平和の大切さを伝えました。会場には応援に駆け付けたひ孫たちの姿も
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裁縫が得意という山田さんが、資料館のボランティアを続ける妹・土田ミヨさんと再現した防空頭巾。資料館に展示されているほか、南中学校で毎年行う平和劇でも使われています

8月 平和を祈る行事

【1日(火)】
戦災殉難者慰霊祭
時間=午前6時から
場所=平潟公園(表町1)
戦災殉難者墓前法要
時間=午前7時から
場所=昌福寺(四郎丸4)
2023平和祈願祭~空襲で亡くなった子どもたち・教職員と市民を追悼する集い〜
時間=午前8時〜8時30分
場所=平和の森公園 (本町3)
長岡市平和祈念式典
時間=午前9時〜10時
場所=アオーレ長岡
鎮魂たむけの花
時間=午前10時〜午後4時
場所=長岡戦災資料館
ながおか平和フォーラム
時間=午前10時15分〜11時15分
場所=アオーレ長岡
内容=ナガサキ・ユース代表団第9期生の講話、アンサンブル オビリーによる慰霊と平和への祈りの演奏
市民におくる映画の集い
時間=午前10時15分〜11時50分
場所=アオーレ長岡
内容=アニメ映画「はだしのゲン」上映
柿川灯籠(とうろう)流し
時間=午後5時〜9時(セレモニーは6時から)
場所=柿川(一之橋〜追廻橋付近)
慰霊の花火「白菊」の打ち上げと梵鐘の打ち鳴らし
時間=午後10時30分から

【31日(木)まで】
長岡空襲殉難者遺影展・戦災住宅焼失地図展
時間=午前10時〜午後4時
場所=長岡戦災資料館

【11日(祝)〜20日(日)】
平和作品の展示
時間=まちなかキャンパス長岡
〈入賞者(敬称略・順不同)〉
►作文の部...福居美花(南中2年)、熊倉茉結子(附属長岡中3年) ►ポスターの部...鶴若愛徠(南中2年)、ひろ(广に黄)田羽依(宮内中1年)、重野胡杜巴(東北中2年)、坂牧伶美(山古志中3年) ►標語の部...池澤雄星、鈴木瑛斗、間嶋心菜(南中2年)、土田悠真(附属長岡中3年)